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きことわ~朝吹真理子さんの素材感ある小説空間を読んで。建築へのインスピレーションを考える。

きことわ~朝吹真理子さんの素材感ある小説空間を読んで。建築へのインスピレーションを考える。_c0213239_1693279.jpg
今話題になっている芥川賞受賞作品『きことわ』を読んでみた。
きっかけは、テレビで出演していた朝吹さんの語りに不思議と引き寄せられたから。

モノを見たり感じたりするイメージを独自に表現していて、
また小説という建築とは異なる文化フィールドではあるけれど、同じようにボキャブラリー(※)を通して時空間を創造する立場のクリエーターとして、この人は‘何か持ってる!’、そして‘自分の創作にきっと元気を与えてくれるだろう!’という気配を感じたからか・・・

※ボキャブラリー:小説家は言葉を用い、建築家は素材、色、形といったデザイン要素を用いる。

小説と建築、どちらも時空間を紡いでいくものであるけれど、作家による時空間のコントロール(純粋性)はまったく異なるものがあると感じている。

他の芸術作品もそうだが、作家自身の空間が純粋に現象しているのが概ねの芸術空間。(構想の純度が高い)
一方、建築空間は、作家個人の純度の高い空間というものはまず無理でそこには、コストや設計条件や施工条件など現実的な存在条件を踏まえなければならない。(構想の純度が薄まっていく)

それら建築の存在条件を乗り越え、どれだけ当初思い描いたような構想の純度を保つか、あるいは残るのか。この純度のパーセンテージの高さ、あるいは低さが出来上がる建築空間の完成度といえようか。

但し、建築の完成度に関わる構想の純度が様々な要因で低くなっても、それを保てるだけの骨太のコンセプトをはじめから仕込んでおかなければ、建築はただの建物に堕落(ランクダウン)してしまい、文化的な存在を持たないただの物体(不動産)と化してしまうだろう。

そういった創作姿勢に関わることをこの『きことわ』を読んで改めて感じた。
これからも注目していきたい新星であるとともに、クリエーターに元気を与えてくれるその存在に感謝したい。


by poi-arch | 2011-01-31 16:00 | ピックアップ空間
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